鯉のぼり

 

ここ数日の突風で、鯉のぼり達

さぞ、激しく泳げただろう。

屋根より高く、雄大に泳ぐ鯉のぼり。

もう、見つけるのさえ難しくなった。

 

広島は昔、鯉の街であったはずだが

今は、鯉にも、鯉のぼりにも

なかなか遭遇出来ない。

 

けれど

広島カープは、鯉のシンボルを

色濃く受け継ぐ。

そして、それを築き上げ

広島人なら、誰もが知っていた

衣笠祥雄さんがこの世を去った。

 

特別な野球ファンでなくとも

優しそうなおじちゃんは

野球選手で唯一

好きなヒーローだった。

野球の技術は、よくわからなかったし

実際の人となりも、わからなかった。

だけど、子供ながら

野性的な見た目の奥底に

優しさや温かさを感じていた。

熱烈なファンでもなかったが

親しみを込めて「きぬちゃん」と呼び

ささやかに応援していた。

だから、とても残念に思う。

 

多くの追悼番組では、鉄人衣笠の

強さと優しさを称えている。

やっぱり、きぬちゃんは

強くて優しい、偉大な人だったのだ。

 

この時期、きぬちゃんは

鯉のぼりと共に

旅立たれたように思える。

ご冥福をお祈りする。

 

 

 

鯉のぼり

いっぱい風を含み、受け止め

そして、さらりと風を受け流していく。

柔軟な、柔らかさゆえの力強さ。

きぬちゃんに、重ね重ね

強さと優しさを

併せ持つ人であれたらと

自分の成長も願う。

 

鯉のぼり

子供の成長だけではない

大人だって、まだまだ成長過程。

自分はどうありたいのか。

いっぱい風を受け止められる程の

そんな受容性がほしい。

まだまだ、風が上手く受け止められない

懐が深かければ、もっと悠々自適に

人生を泳ぎきれるのだろうか。

 

鯉のぼり

結構深い。

懐の広さ・柔らかさ・優しさから

生まれる、真の強さを目指し

時には休みながら

今の私なりに、泳いでみる。