ゆるす

 

子供の頃

折り紙で鶴をおるのが楽しくて

姉と千羽鶴をおろう♪と言って

山ほど鶴を折りまくっていました。

けれど、それをみた父は

「そんなもんつくるな!」と超不機嫌

理由もなく怒るわけですよ。

なんで??と思っても父が怖くて

しぶしぶ、千羽鶴作りは中断。

ちぇっ!怒ることじゃないじゃん。

子供心をないがしろにする

いけずで、面白みのない父ちゃん

と思ったもです。

 

小学生の時の宿題で原爆について

家族の誰かに思いを聞く

というものがありました。

普段、子供の宿題に協力しよう

などという素振りもない、あの父が

思いもよらず原爆後の広島の状況を

つらつらと綴ってくれました。

思いが色々あったのでしょうね。

  

「○○にいた私達家族が広島に戻ると

そこは、一面焼け野原で...」など

父が小学生くらいの年齢の出来事。

私と同じ年代の頃の

過酷な体験、記憶を持っていました。

  

千羽鶴は父にとって何かを連想させる

不快なものだったようです。

思えば、それ以前も以降も原爆の話は

一切したことがありません。 

 

 

さて、

このご時世ですから

実家も、断捨離したらしく

何十年も、日の目をみなかった

父の幼少~社会人~結婚や

親戚とのなんやかんやの写真等が

わんさか出てきてびっくり。

ファミリーヒストリー(NHK)でも

制作できそうなくらいです。

私の知らない先祖や父の歴史を

振り返ることになりました。

大変な過去もあったようですが

笑い飛ばして話す母に、この世代を

生き抜いた人の強さを感じました。

 

祖父が早くに離婚し、父は幼少期に

実母と生き別れています。

そして、今更知ったことですが

私も全く知らない祖母が、どうやら

原爆で亡くなったらしいのです。

 

広島に住んでいれば、親戚の誰かが

原爆で亡くなったり、苦しんだり

している方は多くいます。

父も過去や家族について語る人では

なかったので、仕方のない事ですが

私の命をつないでくれた祖母が

被爆死していたことを、何十年も

気付けず申し訳なく感じました。

 

そうしたこともあり

平和公園内の死没者追悼記念館に

ふらっと立ち寄ってみました。

現代風で静かな図書館といった感じ

死没者が検索できるコーナーがあり

なんとなく祖母の名前を検索すると

思いがけず簡単にヒットしました。

 

被爆した当時の状況が短く記され

自宅~市内の職場へ通いそのまま被爆

28歳で亡くなっていました。

同職場で生き残った方の手記の資料で

わずかながら祖母の当時の雰囲気も

わかり、祖母の残像を見出せました。

私と祖母をつないでくれたこの場所

あの混乱の中から、あの当時のもの

一人一人の生きた証を残した貴重な

資料に感謝の気持ちがわきます。

  

今年は、遺族として慰霊碑に

手をあわせたいと思います。

 

 

さてさて、 

その慰霊碑を建造したのは、

偉大な建築家、丹下健三さんです。

シンプルすぎるデザインを、特に

気に留めることもなかったのですが

建築への思想が理解できると

味わい深くなり、この土地が

本当の意味で再生・復興を果たした

シンボルなのだと感じました。

 

ご機会があれば

被爆者への祈りと、丹下健三さんの

思いを感じながら平和公園を巡って

みられると全然見方が変わりますよ。

 

新たな時代も、こんな風に思想を

形にしていく創造性がたくさん

求めれていくのでしょう。

 

 

歴史や先祖へ思いをはせてみると

脈々とつないでもらった命は

本当にありがたいものです。

不器用な父の生き方にも、今なら

理解と労いと敬意を払えます。

 

子供は必ず、親が体験した影響を

なにかしら受けて育ちます。

それが代々影響し続け、連鎖する

こともあるでしょう。

それはそれで、学びではありますが

どこかの段階で、誰かの世代で

よい感情に置き換える努力も必要です。

もう、新たな時代へ変化しています。

この度、私の世代で、これに終止符を

打つ時なのだと感じました。

 

 

 

原爆がもたらした不の遺産を生かし

平和な世を次の世代につなげる為には

過去を受け入れ、すべてを寛容に

ゆるし(赦し、許し)

今この瞬間の、穏やかさの積み重ねが

必要なように感じます。

 

生活の中の小さな出来事にも、ゆるす

ということが、時に大変難しく感じます。

他人だけでなく、自分にかした無意識の

決め事から、自分自身をもゆるしていく。

「許すことを自分に赦す。」それなしに

結局、他者はゆるせないのです。

ゆるしで一番開放されるのは自分です。

自他への厳しさより、ゆるしの方が

はるかに、難しいと感じています。

 

 

ゆるしとは

すべての人にとっての課題であり

新しい平和な時代に向かうための

超えるべきゲートです。

楽に生きるための価値となります。

 

 

 

 

 

 

 

被爆した体験を持つ、鎮魂の奏者

透明度抜群のナターシャさん 

大画面で感じてみてください。

 

 

 

 

続  instagram/mentalhealth.sophia